日本財団 図書館


 

う方法を採りました。駅では3つの扉が全て開く様にしました。逆に駅から住宅地へは駅発車時に3つの扉を開き整理券を発行しないで乗車し、降車時に前扉から運賃を支払い、途中から乗車した者も降車時に申告するといった運賃後払制を採りました。当社では、これを信用方式としています。これにより駅で70人が降車するのに要する時間は僅か25秒となり、駅前での停車時間の短縮が図られました。
「立たせない」では、高齢者・障害者のための優先座席の設置や駅前のベンチ等を充実し利便を図りました。
「登らせない」では、当該地区のバスを全て低床化し、近鉄駅北乗り場のホームトゥホームだけではなく、南側では改札口と電車のホームの間にエスカレータを設置しました。
「濡らさない」では、学園前駅行きの停留所60箇所の内、8割に当たる48箇所に上屋を設置しました。残りの2割については、歩道が狭く設置が不可能でした。駅前の乗場を3バースから6バースに増やすとともに、上屋・掲示物を一新し、バスとマイカ・―タクシーを完全に分離しました。全車に無料の貸し傘も備えましたが、現在貸し傘は廃止しました。
その他のサービスとしては、当時全社平均の冷房化率が67%でしたが、この地域では100%としています。さらに平成元年からキャッシュレス時代に対応するため、バスカードシステムを導入し、マイクロバスと大型バスの直通運賃による乗り継ぎ制度も導入しました。沿線PRのためにターミナルギャラリーの設置や車内ビデオによる放映も行っています。奈良方面駅系統にはバスロケーションシステムを導入するとともに、地元企業に協力を得て時刻表の無料配付も行いました。高齢者対策としては、奈良市の負担で市内在住70歳以上の方に無料乗車パスを発行し、停留所時刻表の文字を大きくしたワイド時刻表・ジャンボ方向幕等を導入しました。目の不自由な方のためには、点字による案内や乗り場に点字ブロックも設置しました。環境面では、排気ガスの少ないディーゼル・電気ハイブリット・バスやアイドリングストップアンドスターターシステムを装備したバスを積極的に導入しています。当社で38箇所の駐輪場営業を近鉄やその他の鉄道駅で実施していますが、学園前駅でも南北に駐輪場を設け、市条例による規制により無秩序に放置されている自転車を収容し、バス運行の円滑を図りました。
以上、交通規制を機に様々な取り組みを展開し、定時性・迅速性の確保と同時に利便性の追求によるサービスの向上を図ったことにより、バスに対する評価が高まるとともに、学園前地域では乗車可能な地域の1世帯当りの1日の輸送人員が2.6人と大変高い利用率となりました。当該地区全員、世帯数に対する利用率を見ても奈良県平均の約3倍、全国平均の約4倍となり、走行環境を改善するとともに様々な活性化方策を展開することにより、公共交通の役割を果たし得たと評価しています。この規制が実現した要因としては、地区住民のバス利用率が元々高かったことや流入者の大半がキスアンドライドを行っていたため、バスへの転換が比較的容易であったことに加え、何よりも地区住民が望ましいまちづくりのために私的交通の抑制に協力し、公益を確保する事に賛成して頂いたこと、県や警察本部と道路管理者である地方自治体の熱意があったことがあげられます。学園前の交通規制は道路渋滞への対策ですが、渋滞する区間にバイパス道路が完成し、供用開始の段階からバス優先レーンを設置し、成功した事例として、先日兵庫県川西市で実施された取り組みについて、阪急バスの好意で見学させて頂きました。朝のラッシュ時間

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION